【出典】傷寒論、金匱要略
【組成】杏仁、麻子仁、大黄、枳実、厚朴、芍薬
【効能】潤腸通便
【主治】胃腸燥熱、大便秘結
【適応症】
便秘、便が硬く兎糞状、小便が頻数、口渇、咽喉部の乾燥感、腹部膨満感、舌質が紅、舌苔が黄色でやや乾燥、脈が細やや数など。
【処方解説】
本方は潤腸、瀉熱、通便の方剤であり、小承気湯(大黄、枳実、厚朴)に麻子仁、杏仁、芍薬、白蜜を加えるものである。方剤中の麻子仁は甘平で質が潤で脂が多く、潤腸通便に働き、主薬となる。大黄が瀉熱通便に、杏仁が降気潤腸に、芍薬が養陰和裏に働き臣薬となる。枳実、厚朴は行気・破結・消滞の効能があり、佐薬となる。全体では潤腸、通便、緩下の効能により腑気を通じて陰液を守り、通便しても正気を傷らない効果が得られる。
【参考】
本方は、薬理研究によって、以下のことが証明されている。
(1)麻子仁は脂肪酸を30%もふくみ腸内のアルカリによって脂肪酸を生じ、腸壁を刺激すると同時に水分吸収を妨げて緩下作用をひきおこす、(2)杏仁は油性成分をふくみ、便を軟化する、(3)枳実・厚朴は腸の蠕動を強め、大黄はつよい瀉下作用がある、(4)芍薬は補血の効能によって栄養滋潤するとともに、平滑筋のけいれんを緩解して鎮痛し、補助的に作用する、(5)全体で腸内容物を増加し、腸管蠕動を増強し、腸内移送を促進して通便作用を発揮するなど。
【臨床応用】
熱病・発汗過多などに続発する腸燥便秘、あるいは習慣性便秘に用いる。
(1)便秘:
習慣性便秘、痔疾患による便秘、産後便秘などによく用いる。便が硬く兎糞状、口渇、咽喉部の乾燥感、腹部膨満感などの症状が見られる場合には投与する。
(2)肛腸疾患手術後の合併症:
切れ痔、内痔や外痔、肛門の化膿症などの患者に手術前の3-5日に本方を投与することにより、手術後の感染、排尿困難、便秘、肛門周囲の浮腫や出血などの合併症を予防することに有効である。
(3)神経性頻尿:
頻尿、便秘、口渇、咽喉部の乾燥感などの症候が見られる場合には本方を投与するとよい効果が得られる。
【使用上の注意】
(1)虚証あるいは老人に長期間に投与しないように注意する必要がある。
(2)妊婦には流産の恐れがあるので禁忌する。
(3)陰虚・血虚による腸燥便秘には滋陰・補血を主体にすべきで、本方だけで対応してはならない。