整体観念は中医学特徴の一つであり、中医学理論大系の中で重要な考え方である。整体観念とは、人体は統一の整体であり、臓腑・経絡などの多くの組織器官から構成されるが、各臓腑・組織・器官の機能活動が孤立ではなく整体活動の一部分として考えられることである。即ち各臓腑・組織・器官は生理的に互いに連絡・依頼・制約し、経絡を経て互いに情報を伝達し、気血・津液が全身を循環していることによって非常に調和・統一整体を形成していると考えられる。病理上では一定的なルールによって変化し、互いに影響されるため大腸肛門疾患の発生も臓腑・経絡に密接な関係がある。 一、肺と大腸 肺は臓で陰に属し、大腸は腑で陽に属し、手太陰肺経は肺に属し大腸につながり、手陽明大腸経は大腸に属し肺に連絡するため、肺と大腸は臓腑・表裏の関係となる。肺は気を主宰し、行水を主宰し、大腸は転導を主宰し、津液を主宰する。大腸の転導機能は肺気の肅降機能に依頼するため肺気の肅降は順調があれば大腸の転導機能も正常になり、肺気が上逆・鬱滞すれば大腸の腑気も停滞し、便秘、腹部膨満などの症状が現れる。肺経の熱が大腸に影響すると、悪寒・発熱・咳・痰・呼吸困難・喘息などの肺熱証だけではなく、内痔の脱出・肛門の腫れ・肛門の疼痛・血便など大腸の症状もしばしば見られる。逆に便秘・腹部膨満など大腸の腑気不通によって肺気の肅降機能にも影響し咳や喘息などの症状が現れる。 ニ、脾と大腸 脾は西洋医学の脾臓だけでなく、消化器機能を概括している。脾は胃・小腸・大腸内の飲食物の消化・吸収・運送・排泄などを主宰する。脾はその機能が低下すると寒によって下痢が起こり、熱によって便秘を引き起こす。脾の統血機能が低下すると痔の出血が見られ、脾気不足及び中気下陥によって内痔脱出・脱肛・直腸下垂などの症状が見られる。脾陽が虚弱すれば腹部膨満・慢性下痢・下腹部の冷えなどの症状が現れる。まとめると脾気は大腸の機能をコントロールしているので脾気が弱くなると大腸機能が乱れ、いろいろの疾患を引き起こす。 三、腎と大腸 腎がニ陰(前陰・後陰)に開竅するため、便の排泄が腎の気化作用によって行う。腎気が元気すれば排便が順調になり、腎陰が弱くなると便秘が起こり、腎陽が虚弱すれば五更瀉(夜明けの下痢)・慢性下痢・脱肛などの症状が現れる。だから腎気の強弱は直接に大腸の機能に影響を与えると考えられる。 四、腑と大腸 六腑(胃・小腸・大腸・膀胱・胆・三焦)の共同機能は転導・飲食物の消化吸収・廃物の排泄であり、腑と腑の間は互いにつながり、協調して働く。飲食物は胃に入り、胃の収納・腐熟を受けてから小腸に送り、小腸で清濁を分けて、清のもの(水谷精微――栄養物)を脾に輸送し全身を滋養し、濁のもの(残渣――水谷糟粕)中の水液を膀胱に送り、濁中の残渣を大腸に送り、水分を一部分再吸収し、残ったものが糞便となり肛門を経由して体外へ排出する。胃に熱があれば津液を消耗し便秘を起こすことがあるし、大腸に熱があれば腸燥で便閉になるため、逆に胃の下降作用に影響し、胃気が上逆して悪心、嘔吐などの症状が現れる。 五、経絡と大腸 経絡は全身気血を運行し、臓腑・四肢と連絡し、上下内外を交通し、体内各部分の機能活動を調節する通路である。肛門は経絡を通じて全身の臓腑につながり、逆に臓腑の病気は肛門に影響を与えることもしばしば見られる。
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