第十四節 結腸癌
結腸癌は消化管によく見られる悪性腫瘍であり、41〜50歳の年齢に多発する。臨床では右側結腸癌の場合には下痢、腹部の鈍痛、貧血、全身衰弱などが多く、左側結腸癌の場合には便秘、腹痛、出血などがよく見られる。治療では、早期発見や早期手術が重要であり、手術不可能の場合には免疫療法、化学療法、放射線療法などが挙げられる。 |
一、 病因病機 |
中医学では、結腸癌は“腹痛”、“腸積”、“臓毒便血” “下血”、“下痢”などの範疇に属する。結腸癌の形成は、憂・思・鬱・怒などの情感失調、飲食の不摂生などが原因で脾胃を傷つけ、脾胃の運化機能を乱し、気滞血鵞・湿毒や熱毒内生の病態をもたらし、癌を形成すると考えられる。 |
1、気滞血鵞 気にしやすい、考え過ぎ、怒り、抑鬱などが原因で、肝鬱気滞・気機紊乱・臓腑気血失調の病態をきたし、大腸の経絡阻滞によって腫瘍を形成する。 |
2、湿熱毒結 湿熱が胃腸に長らく停滞すると、胃腸の気機が乱れ、気血の流れが阻滞され、結腸に終結することによって腫瘍を形成する。 |
3、正虚邪実 腫瘍や癌は体の気血を消耗し、気血や陰陽のバランスを崩し、気血・陰陽の虚損によって全身疲労倦怠感、疲れやすい、消痩、自汗などの症状が見られる。 |
二、弁証論治 |
この病気の病態には虚実挟雑・本虚標実がよく見られる。初期には実証が主であり、腹痛がひどく、下痢、血便、粘血便などが現われ、気滞血鵞型や湿熱薀結型に分けて治療する。末期には癌が体の気血を消耗するため、全体的に虚証が主であり、腹痛は軽く、全身虚弱の状態が見られ、正虚邪実型や脾腎両虚型に分けて治療する。 |
(一)気滞血鵞型 |
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(二)湿熱薀結型 | ||||||||||
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(三)正虚邪実型 | ||||||||||
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(四)脾腎両虚型 | ||||||||||
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三、経験秘方 |
(一)孫桂芝経験方 | ||||||||||
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(二)著者経験方 | ||||||||
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四、ポイント症候によるエキス剤の使い方 |
臨 床 症 状 | 漢方エキス剤 |
★腹痛、腹部の圧痛、痛いところが固定しており、腫塊があり、便の色が紫暗で、腹部膨満などが見られる場合。 | (25)桂枝茯苓丸 |
★下腹部の疼痛、便秘、腹部膨満感などを伴う場合。 | (61)桃核承気湯 |
★手術後、進行癌、末期癌に全身の疲労倦怠感、疲れやすい、自汗などを伴う場合。 | (41)補中益気湯 |
★手術後、進行癌、末期癌に食欲不振、味がない、軟便、腹部膨満感などを伴う場合。 | (43)六君子湯 |
★手術後、進行癌、末期癌に顔色が悪い、貧血、全身の疲労倦怠感、食欲不振などを伴う場合。 | (48)十全大補湯 (108)人参養栄湯 |
★寒がり、腹部の冷え、冷たいものを食べたり飲んだりするとすぐ腹痛を起こす場合。 | (32)人参湯 附子理中湯 |
★末期癌に全身の虚弱、腹痛や腹部の不快感などを伴う場合。 | (98)黄耆建中湯 |
★手術後に腸管通過障害、腹痛、腹部膨満感などの場合。 | (100)大建中湯 |
★食欲不振、顔色の蒼白、疲れ易い、腰や下肢の脱力感、四肢の冷え、五更瀉などがある場合 | (30+32)真武湯合人参湯 |