第七節 直腸・結腸ポリープ

第七節 直腸・結腸ポリープ

直腸や結腸のポリープは、大腸外来でしばしば発見される病変であり、受診患者の約10%に認められる。ポリープは、粘膜上皮に生じた限局性隆起病変であり、有茎性のものと無茎性のものがあり、単発性病変と多発性病変がある。また、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープがあり、腫瘍性ポリープには、良性のものと悪性のものがある。
中医学では直腸や結腸のポリープは“息肉”などの範疇に属する。ポリープの発生には飲食の不摂生、疲労、慢性疾患、精神的ストレス、先天不足などが関わっていると考えられる。

一、病因病機


飲食の不摂生、疲労、慢性疾患、精神的ストレスなどが原因で大腸の気血運行を阻害し、気血凝滞の病態をもたらし、ポリープを形成する。

1、湿熱下注
お酒や油濃いものの取りすぎ、辛いものの取りすぎなどが原因で脾胃を傷つけ、湿熱を生じ、大腸に下降することによって気血凝滞の病態をもたらし、“息肉”を形成する。

2、寒湿凝滞
過度の疲労、あるいは先天不足などが臓腑を虚弱にさせる。寒湿の邪気は臓腑が虚弱しているうちに大腸に侵入し、経絡を阻塞し、瘀血の病態をもたらし、“息肉”を形成する。


3、正虚瘀結
長期間の憂鬱、考えすぎ、精神的ストレスなどが脾胃を傷つけ、脾胃の運化機能が低下し、水湿が停滞して痰湿を形成し、痰瘀大腸の病態をもたらし、“息肉”を生じる。


二、弁証論治


弁証はまず虚実を弁別する。長期間の虚弱、気血不足、正気虚損などが原因で邪気留滞をもたらし、正虚?結の病態を引き起こす。また大腸の機能が乱れ、気血の流れが悪くなり、邪気が大腸に停滞するのは邪気の実証である。

1、湿熱下注

症候 粘液血便、排便してもすっきりしない、ポリープの脱出、ポリープの表面に糜爛・滲出・紫暗、しばしば下腹部の脹痛、膨満感、悪心、嘔吐などを伴う。舌質が紅、舌苔が黄膩、脈は滑数。
治法 清熱利湿、理気止血
方剤 黄連解毒湯「外台秘要」加味
黄連5g 黄芩5g 黄柏5g 山梔子4g 茯苓6g 地愉炭5g 大薊5g 小薊5g 枳穀4g
加減 便秘を伴う場合には草決明5gを加える。
漢方エキス剤 (15)黄連解毒湯を用いる。便秘を伴う場合には(15+84)黄連解毒湯合大黄甘草湯を投与する。

2、気虚血瘀
症候 ポリープが段々大きくなる、ポリープの脱出が自然に環納できず、便の回数が多く、しばしば食欲不振、顔色が悪い、痩せ、疲労倦怠感等を伴う。舌質が淡紫暗、舌苔が薄白、脈は細渋あるいは細弱。
治法 益気補血、化瘀散結
方剤 補陽還伍湯「医林改錯」加減
黄耆10g 人参4g 当帰5g 赤芍6g 地竜4g 川?5g 桃仁5g 紅花4g 牛膝5g 
白朮4g
加減 腹部膨満を伴う場合には枳穀5g、木香3gを加える。
お腹の冷えや痛みを伴う場合には炮姜4g、香附子4gを加える。
漢方エキス剤 漢方エキス剤には適当な処方がないがそのかわりに(41+25)補中益気湯合桂枝茯苓丸を用いる。お腹の冷えや痛みを伴う場合には(100)大建中湯あるいは附子理中湯を投与する。

3、 寒湿凝滞
症候 粘液便、下痢、便の回数が多い、しばしば腹痛、食欲不振、味がない、頭や体が重たい、腹部の痞え感などを伴う。舌質が淡、舌苔が白膩、脈は濡緩。
治法 温化寒湿
方剤 胃苓湯「丹渓心法」加減
蒼朮5g 桂皮2g 厚朴5g 茯苓6g 陳皮4g 白朮5g 沢瀉5g 猪苓5g 生姜5g 
大棗5g 甘草3g
加減 腹部膨満を伴う場合には炮姜5g、木香3gを加える。
漢方エキス剤 (115)胃苓湯を用いる。

三、保留浣腸


方剤1 烏梅15g 五倍子15g 夏枯草15g 紫草根15g 白芍15g 蒼朮15g 蓮根15g 生姜15g
方法 上記した生薬を600ml水に入れて150〜200mlまで煎じ、
50〜60ml薬液を用いて保留浣腸する。一日に1〜2回に行なう。 

方剤2 烏梅12g 五倍子6g 夏枯草30g 五味子6g 牡蛎30g 海浮石12g 紫草根15g 
貫衆15g
方法 上記した生薬を600ml水に入れて150〜200mlまで濃く煎じ、
50〜60ml薬液を用いて保留浣腸する。一日に1回に行なう。

四、手術療法


手術治療は臨床で常用な治療であり、専門の本を参照。
ただし、体の自覚症状は手術しても治らないので、手術後にも漢方薬を使って体のバランスを修正することが必要である。

五、漢方エキス剤の使い方


臨床のポイント症状 漢方エキス剤
★粘液血便、排便してもすっきりしない、ポリープの表面に糜爛・滲出・紫暗などを伴う場合。 (15)黄連解毒湯
★ポリープの脱出が自然に環納できず、便の回数が多く、食欲不振、顔色が悪い、痩せ、疲労倦怠感などを伴う場合。 (41+25)補中益気湯合桂枝茯苓丸
★粘液便、下痢、腹痛、頭や体が重たい、腹部の痞え感などを伴う場合。 (115)胃苓湯
★体力があり、便秘、ポリープ、舌質の紫暗を呈する場合。 (61)桃核承気湯
★ポリープに、疲労倦怠感、疲れやすい、食欲不振、手足の冷え、顔色が悪いなどを伴う場合。 (48)十全大補湯




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