第一節 個人保健・予防法

第一節 個人保健・予防法

一、個人衛生と活動

衛生面によく気をつけて、いつも清潔な体を守る。よく運動して体のバランスを維持することは病気の予防に対して重要である。

1、長時間の座位や立位を避ける。
長く座ったり立ったりすると肛門や直腸の血液回流に影響し、肛門や直腸の粘膜上皮が下へ移動し、肛門や直腸の病気を引き起こしやすくなる。長期間の座位や立位の仕事をしている人達には適当な運動、たとえば歩行運動、水泳、体操などをしたほうが肛門や直腸の病気を予防することにおいて重要である。

2、肛門の筋肉を刺激する。
肛門の筋肉を収縮させ、毎日3−4回、毎回5−10分ぐらい。
肛門の筋肉をよく収縮させると筋肉を強くさせるだけではなく、肛門や直腸の血流を改善し、痔疾患の予防に役立つ。
3、清潔な肛門を守る。
衛生的にする。特に肛門やその周囲に清潔・乾燥を守るのは大切である。それは肛門周囲の皮膚疾患を予防することに役に立つ。
4、妊娠の女性は毎日適当な運動をさせたり、適当に横になったりさせることが大切である。長時間の座位や立位を避けるべきである。

二、良好な生活習慣

体の健康状態を守るため、食事のバランス、運動のバランス、心のバランス、禁煙と節酒が大事である。暴飲暴食、辛いものの取りすぎ、運動不足、精神的ストレス、喫煙、大量な飲酒などは肛門・直腸疾患の発病あるいは増悪に深く関わっていると考えられる。

1、食事のバランス

我々は毎日三回食事をし、食べ物や飲み物から栄養をとって、その営養が体の筋肉、内臓、神経、免疫、内分泌などを滋養している。中国では昔から “民以食為天” という言葉があった。その意味は国民の健康が食事に直接に関係し、食事のバランスが病気の発生や増悪に関わっている大切なことである。まだ“百病従口入”という言葉もあった。その意味は食事に気をつけないと口からの原因でいろいろな病気を引き起こすということである。もちろん食事は肛門大腸の疾患にも影響すると考えられる。例えば、辛いものやお酒を取りすぎると便秘や痔などの疾患を起こし、あるいは増悪することもよく見られる。
便秘や痔などがある場合には繊維が多く含まれる野菜や果物をよくとり、辛いものや温性や燥性を持つものをとらないように気をつけなければならない。その時には黒胡麻、蜂蜜やクルミなどの潤腸作用があるものをよくとることを勧める。暴飲暴食を避けなければならない。

2、運動のバランス

運動は健康の元だと言われている。運動不足は便秘、痔疾患、脱肛、直腸ガンなどの発生に深く関わっている。特に長く座る仕事をしている方に対して、運動が肛門大腸疾患の治療や予防に重要な役割を果たしていると考えられる。運動の方法は歩行運動、水泳、体操などである。

3、心のバランス

心のバランスとは精神的な面から見ると、良好な心理状態を守ることである。中医学は人の感情変化が七種類あり、すなわち喜・怒・憂・思・悲・恐・驚である。その感情の変化は過激になると臓腑の機能に影響し、いろいろな病気を引き起こしたり増悪したりすることがよく見られる。精神的なストレスが肛門大腸の機能に影響しやすく肛門大腸の病気を引き起こすことが多い。

4、禁煙と節酒

(1)禁煙

たばこの煙の中に含まれる有害な化学物質は200種類を超えており、この化学物質の中には発ガン物質も多く含まれている。たばこの発ガン物質は細胞の遺伝子に傷をつけやすく、傷つけられた細胞の遺伝子は通常、体内の遺伝子修復機能の働きによってすぐに修復されるが、その働きには個人差があって修復がうまくいかない場合もある。このようにして細胞のガン化が起こる。ガン化細胞が現れる時には体の免疫機能(NK細胞を中心とする免疫の監視・防御機能)がガン化の細胞を見付けて処理してしまい、ガンが起こらないが、免疫機能が低下している場合にはガン細胞が免疫機能の監視から逃げてどんどん増殖してガンの形になってしまう。
一般的な人はたばこが主に肺に影響し、呼吸器疾患や肺ガンの発生に関係があると考えられるが、肺ガンだけではなく、たばこが関係するガンはいろいろなものがある。たとえば肺ガンをはじめ、食道・胃・腸などの消化管、肝臓、膵臓、子宮、卵巣などのガンの発生にも関わっていると考えられている。なぜならば発ガン物質がたばこの煙を吸うことによって口、咽喉を通って気管支から肺に入るのは普通の考えであるが、それだけではなく、唾液とともに飲み込まれ、食道・胃・腸などの消化管をはじめとして、全身にばらまかれ、大腸ガンや直腸ガンの発生にも関わっていると考えられる。たばこを吸う人と吸わない人を比較すると、吸う人には明らかに発ガンのリスクが増えていることが最近の研究によって証明されている。
たばこの健康被害は、決してたばこを吸う人だけの問題ではなく、たばこの煙には、本人が吸う「主流煙」と、たばこの先から立ちの「副流煙」とがある。煙には多くの有害物質が含まれているが、その主流煙より副流煙のほうに数倍から十数倍も多いことがわかっている。家族の中に一人の喫煙者がいるとみんなが被害者になり、特に子供と一緒に過ごす時間が長いお母さんの喫煙は、子供の健康への影響がもっとも強い。皆さんの健康のために、また自分自身の命のために禁煙すべきである。

(2)節酒

酒は昔から薬としてよく使われている。人は毎日酒を少しずつ飲むと体に対して有利であり、血液循環を改善する作用があるが、飲みすぎると害があり、アルコール中毒、肝機能障害、肝硬変などを引き起こすこともある。中医では、酒は熱性を持ち、飲みすぎるとその熱が体内に溜まり、肛門周囲の湿疹、掻痒、熱感などを起こし、さらに直腸や大腸の炎症を起こす原因となると考える。

三、正常便通を守る

1、規則的な排便
一般的に毎日一回あるいは二回排便する。できるだけ時間帯を決めてたとえば起床後、あるいは食事後に排便したほうがよい。
2、排便時間を短縮する。排便時間は一般的に5分ぐらいでよいである。排便時間は長くすると痔疾患を起こりやすくなる。排便困難の場合にはできるだけ、むりしないで潤腸剤を用いて翌日に同じ時間に排便する。
3、便秘の場合には毎朝空腹に淡塩水50−100mlを飲むか、潤腸作用がある漢方薬を使うことを勧める。
4、慢性便秘の場合には潤腸剤を用いる。たとえば麻子仁丸、潤腸湯、胡麻油、蜂蜜などを勧める。長期間に下剤の使用を避けるべきである。

四、肛門大腸疾患を早く治療する

肛門直腸疾患はしばしば相互に影響・誘発する。たとえば肛門周囲や陰部の湿疹、掻痒症、便秘などは痔疾患に相互に影響することがよく見られる。肛門周囲膿瘍、痔漏、裂肛などは相互的に誘発することが多い。各種の腸炎、胃の疾患、糖尿病、肝胆疾患、心肺疾患、神経系疾患、内分泌疾患、婦人科疾患、ガンや悪性腫瘍などは肛門大腸疾患の発生や増悪に関わっているのでそれらの疾患を早く治療したほうがよいと考えられる。





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