大腸は腹腔にあり、その上端が盲腸のところで小腸に連接し、下端が肛門につながる。大腸の主な機能は廃物の運送、大便の排泄であり、肛門の機能は排便のコントロールである。
大腸は小腸から送ってきた食物残渣と水分を受け、その中の水分を一部分再吸収し、津液を分泌して腸腔を潤滑し、食物残渣が糞便を形成させて体外に排泄する。中医学はそれを“燥化過程”という。排便コントロールは肛門の機能であり、大腸の“燥化”および“伝導”機能と相互に協調する。大腸肛門が五臓からの影響を受けやすいので、臓器に病気があれば大腸肛門の“伝導・排泄・コントロール”機能に影響を与え、下痢あるいは便秘・血便・肛門疼痛・痔・脱肛などの症候が現れる。
大腸は六腑の一つであり、生理機能が“燥化・伝導”であり、生理特徴が“通暢・降下”であり、胃・小腸・三焦・膀胱と共に消化・吸収・排泄に働く。一方、外邪の侵入、精神的ストレス、飲食失調などが大腸の“通暢・降下”機能を失調させ、いろいろ病理的変化を引き起こす。例えば“通暢・降下”機能が亢進すると下痢となり、不足すれば便秘となる。一般的に大腸の“伝導・排泄”は一定的なルールがあり、成人が毎日あるいは隔日に一回排便し、朝に排便することが多い。人体の臓腑機能・活動は気血の流れる順番があり、朝に大腸の気血が旺盛になるので、排便に対して有利だからである。中医臨床では下剤を用いる場合には大腸の特徴を重視し、緩下剤が寝る前に服用し、峻下剤が夜明けに用いる。それは下剤の薬理作用時間が体内の生物時計と一致し、治療効果が上がると考えられる。
大腸の特徴は“通暢・降下”であり、その機能が失調すれば、軽い場合には便秘を起こし、ひどい場合には痞・満・燥・実の陽明腑実証が現れる。また大腸は津液を主り、津液の生成・吸収・運送・転化・排泄では肺・脾・腎・三焦・膀胱に関係があるが、津液の吸収が主に大腸で行い、大腸の虚寒によって吸収機能が低下するため腸鳴・腹痛・下痢などの症状が現れ、ひどい時に陰液が失い、陰陽両虚の病態に陥り、脱肛・粘膜下垂などを引き起こす。
肛門は直腸の末端にあり、五臓気機の昇降・制約を受け、便のコントロールに働く。肺気の肅降によって大便を排泄し、脾気の昇清によって便をコントロールする。もし肺に熱があれば肛門が閉結するため便秘になり、肺臓虚寒あるいは脾気不足などが原因で脱肛や粘膜下垂などを起こすこともある。その他に大腸の転導機能は肛門にも影響し、その機能異常によって便秘・下痢・肛門疾患を起こすことが多い。