【出典】金匱要略
【組成】地黄、芍薬、当帰、川芎、艾葉、甘草、阿膠   
【効能】補血止血、調経安胎
【主治】血虚の出血
【適応症】
顔色が悪くつやがない、皮膚がかさかさして潤いがない、四肢のしびれ、筋肉のひきつり、目のかすみやつかれ、頭のふらつきなどの血虚症候とともに、血便・血尿・不正性器出血などの出血症候を伴う。出血の特徴は、出血の血色が淡暗で、少量で持続性のことが多い。舌質はやや淡白、脈は沈細弱あるいは虚
【処方解説】
本方は、元々婦人崩漏(不正性器出血)と胎動不安のために設計された処方で、四物湯に艾葉、甘草、阿膠を加えたものである。本方の特徴は標証(出血)と本証(沖任虚損・血虚偏寒)を同時に考えて治療し、すなわち阿膠・艾葉を用いて出血を止めて、四物湯を用いて調肝養血で本証を治療するということである。
四物湯は、血虚に対する補血の基本処方であり、滋陰補血の地黄・補血平肝の芍薬・補血活血の当帰・活血行気の川芎が配合されているものである。四物湯の補血作用とは、地黄・芍薬・当帰は骨髄造血系、神経系、内分泌系などに必要な栄養物を供給し、川芎は血管拡張作用を通じて血液循環を促進し、栄養物の組織への供給と分配を強めるということが考えられる。阿膠は滋陰補血・止血の効能があり、艾葉は温経止血・止痛安胎の作用を持ち、両者の配合で止血するとともに調経安胎にも働く。芍薬・甘草は緩急止痛し、甘草は諸薬を調和する。全体で養血止血・調経安胎などの効果が得られる。

【参考】
本方は、薬理研究によって、以下のことが証明されている。
(1)血管収縮中枢の興奮、血液凝固時間の短縮、出血時間の短縮により、出血を止める、(2)滋養強壮作用があり、体を栄養・滋潤する、(3)内分泌系に栄養を供給し、内分泌機能を調整するなど。

【臨床応用】
婦人血虚による出血(不正性器出血、月経過多、産後の出血、妊娠の出血など)に対して、顔色がわるくつやがない、目のかすみやつかれ、四肢のしびれ、筋肉のひきつりなどの症状を伴う場合には本方を用いる。
また、男女を問わず血虚症候(四肢のしびれ、顔色がわるくつやがない、目のかすみやつかれなど)に、出血の症状を伴う場合には本方を用いてもよい。
1、痔出血:
比較的体力低下した人で出血が長引く、出血の血色が淡暗で、貧血やめまい、手足の冷えなどを伴う場合には本方を投与する。
2、不正性器出血:
出血の色は淡暗で、少量で長引く持続する、顔色がわるくつやがない、目のかすみやつかれ、四肢の冷えなどの症状が見られる場合には本方を投与する。体が疲れやすい、全身疲労倦怠感、食欲不振などを伴うときに芎帰膠艾湯合帰脾湯を用いる。
3、月経過多:
月経の量が多く、色が紫暗あるいは淡暗であり、顔色がわるい、四肢の冷えなどの症候が見られる場合には本方を用いる。
4、切迫流産:
妊娠中に出血、腹痛があり、流産の兆しを認める場合には本方を用いる。体がだるく疲れやすい、胃腸が弱い場合に本方に白朮・桑寄生を加えて優れた効果が得られたとの報告がある。
5、産後の子宮収縮不全による出血:
産後に出血が続き、出血の血色が淡暗であり、顔色が悪くつやがない、口唇の淡白、四肢の冷えなどの症状が見られる場合には本方を投与する。
【使用上の注意】
(1)炎症性・充血性の血熱妄行による出血には本方の投与を禁止する。
(2)本方は寒がりや手足の冷えを伴う寒証に偏る出血に用いるべきである。